共和ゴム株式会社

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ゴム不良の原因と対策の裏にある“ゴム加工の面白さ”

平素より大変お世話になっております。
共和ゴム(株)で工場長を務めてさせて頂いております松本です。

自己紹介にも記載しておりますが、ゴム製造業に従事して30年以上になります。長年携わっていても、ゴム加工には今なお驚かされることがあり、面白さを感じる場面が多々あります。

ゴム加工の面白さを感じる瞬間はいくつもありますが、特に印象的なのは、新規製品の立ち上げ時や既存製品の生産中に思いもよらない不良が発生したときです。こうした不良が発生すると、生産工程の見直しや材料特性の再確認、成形条件の調整など、多角的なアプローチが求められます。特に、問題が大きく原因の特定が困難であるほど、その解決に至るまでの試行錯誤は大変ですが、乗り越えたときには大きな達成感を得ることができます。原因を解明し、新たな知識を得ることで、ゴム加工の奥深さを改めて実感し、それがこの仕事の面白さにつながっています。

今回、弊社の次世代を担う者や、ゴム製造に携わるすべての方々に向けて、ゴム製品における一般的な不良とその対策について私なりにまとめてみました。

不良内容 原因 確認 及び 対策
材料分散不良 練り不足 成形品の断面確認(ブツブツの有無)、ゴム練り手順の見直し
表面凹凸 金型問題 金型汚れ(灰汁)の洗浄、金型キズの修理
エアーキズ 製品形状
成形条件
製品に影響する角はR形状にして貰う、材料サイズ、
重量、置き方見直し、PL面に紙片を挟む
型締めスピード、金型温度、真空引きタイミング等の見直し
CAV内の材料の流れ方を想像及び確認
(わざとショートモールド作成)
充填不足
(キズ)
仕込み材料
型面の滑り
材料サイズ・重量・置き方の見直し、
加硫立ち上がり(加硫曲線T10)の確認
型表面を滑り易くする(離型剤使用、金型表面処理)
融合不良 成形条件
仕込材料
材料流動量、離型剤の濃度及び頻度を減らす、加硫条件見直し
加硫立ち上がり(加硫曲線T10)確認
カケ・割れ・サケ 脱型時の負荷 製品形状&型構造&材料選定&加硫条件の見直し
離型剤、脱型治具、脱型時の製品への負荷を減らす
異材混入 材料 材料保管、練り返し材管理、材料名の明記と識別、比重の確認
汚れ
コンタミ
(色物)
現場環境 手袋の見直し(糸くずほつれ)、脱型治具の汚れ確認
裁断・計量現場の4S、成形現場の4S、床塗装
限度見本(きょう雑物測定取り交し)、クリーンルーム
ゴム表面の
ざらつき
型のCAV表面 金型汚れ(灰汁)の洗浄、
型面の再表面処理(表面処理の劣化)
PL部引け 型温と型締圧 加硫立ち上がり(加硫曲線T10)の確認
加硫金型温度を下げる、加硫型締圧を下げる
加硫不足
(硬度が低い)
(寸法異常)
加硫温度
と時間
成形品の断面確認(気泡や未加硫ないか?)
製品体積に応じた加硫時間、金型温度の定期確認
脱型時間の短縮(長時間脱型による型冷え)
加硫オーバー
(硬度が高い)
(変色(色物)
加硫温度
と時間
同一良品と製品硬度比較、
材料スコーチ(材料保管)、練り返し材管理
仕込時間の短縮(仕込長時間による材料表面焼け)
加硫条件見直し(加硫時間が長い、加硫温度が高い)
バリ残り
(バリ厚)
(高さ不良)
成形機能力
金型構造
仕込材料
加硫条件
仕上げ不良
型締圧不足なら成形機能力アップ
金型面積あたりの圧力、バリの出し方、
フロー溝の拡大・追加、喰い切り修理
加硫立ち上がりを遅く、仕込重量を減らす及び精度UP、
材料のスコーチ、流れの良い材料に変更、
バリに流れ模様があるなら加硫条件見直し
(型温下げ、型締圧UP)
仕上げ方法見直し(ハサミ、打ち抜き等々)、
限度見本作成と限度の取り交し
ブルーム 材料
加硫不足
配合の見直し
加硫条件見直し(加硫時間が短い、加硫温度が低い)、
二次加硫
変形 加硫不足
製品保管
同一良品と製品硬度比較、
成形品の断面確認(気泡や未加硫ないか?)
成形後の冷却、ボックス入数
員数過不足 製品重量の
バラツキ
数え間違い
バリ厚を出来るだけ薄くし重量のバラツキを少なくする、
小分けにする
マス目トレーの使用検討、通過カウンター使用検討

※小生が思い出せる限り記載しましたが、この内容が全てでは無く又全ての製品に該当するとは限りません

不良の発生にはさまざまな原因が関係しており、単純なミスや機械の不調だけでなく、材料の特性、環境条件、成形条件の微妙な違いが影響を及ぼすこともあります。さらにこれらの要因が単独で問題を引き起こすとは限らず、時には複数の要因が複合的に絡み合って不良につながることもあるため、不良の原因を正しく分析し、適切な対策を講じることが重要です。
また、不良原因の特定にはもう一つ重要なことがあります。それは、諦めずに考え続ける姿勢です。再現テストを行っても期待した結果が得られないことがありますが、そこで断念するのではなく、「その方法では原因を特定できなかった」という一つの事実が得られたと捉えることが大切です。つまり、数ある原因の中からひとつの可能性を消去できたと前向きに受け止め、次の可能性に目を向けて再び考察と検証を重ねる姿勢が、不良の根本原因の特定と解決には欠かせません。

本資料が、ゴム加工に関わる皆様にとって不良対策の手がかりとなり、より安定した品質の製品を生み出すための一助となれば幸いです。また、ゴム加工の現場では日々さまざまな課題が発生しますが、それらを乗り越えながら技術を磨き、より良い製品を生み出す過程で、ゴム加工に興味を持っていただける方が一人でも多くなれば幸いです。

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