プラスチックは現代社会に不可欠な素材ですが、「どのような種類があるのか?」「用途に応じた選び方は?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、プラスチックの起源から汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)、さらにバイオプラスチックやスーパーエンプラといった次世代素材まで、構造別・機能別にわかりやすく解説します。
1. プラスチックのはじまり:天然素材からの代替として誕生
プラスチックの歴史は19世紀半ばのアメリカにさかのぼります。象牙の代用品として登場した「セルロイド」は、世界初の人工プラスチックとされ、ビリヤードの玉や装飾品に使用されました。
さらに1907年には、レオ・ベークランドによって世界初の完全合成プラスチック「ベークライト(フェノール樹脂)」が開発され、「プラスチック時代」の幕が開きました。
2. 戦時下で普及した汎用プラスチックの登場
第二次世界大戦中、金属や天然資源の代替として、軽量で成形しやすい汎用プラスチックが急速に普及しました。
この時期に登場したポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)などは、現在もレジ袋や日用品、包装材に幅広く使われています。これらは汎用樹脂と呼ばれ、プラスチックの基礎を築いた素材です。
代表的な汎用プラスチックの種類と特徴
材料名(略号) | 誕生時期 | 特徴・用途 |
---|---|---|
ポリエチレン(PE) | 1930年代 | 軽量で柔軟、耐水性に優れる。レジ袋、ボトル、タンクなど |
ポリプロピレン(PP) | 1950年代 | 耐熱性・剛性が高く、食品容器や家電部品に利用 |
ポリスチレン(PS) | 1930年代 | 安価で成形性が高い。カップ、梱包材などに活用 |
ポリ塩化ビニル(PVC) | 1930年代 | 耐薬品性・難燃性◎。ホース、建材、水道管など |
アクリル(PMMA) | 1930年代 | 透明性が高く、ガラス代替として使用。看板、水槽など |
3. 金属代替として進化したエンジニアリングプラスチック
1960年代以降、金属の代替材料として求められたのが「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」です。
エンプラは高温や摩耗に強く、自動車部品、精密機器、家電など、構造用・機能用樹脂として使われています。
代表的なエンジニアリングプラスチックの一覧
材料名(略号) | 誕生時期 | 特徴・用途 |
---|---|---|
ポリアミド(PA / ナイロン) | 1930年代 | 高強度・耐摩耗性に優れ、ギアやベアリングに使用 |
ポリアセタール(POM) | 1950年代 | 寸法安定性・耐疲労性◎。精密部品やコネクタに使用 |
ポリカーボネート(PC) | 1950年代 | 耐衝撃性が高く、光学レンズや電子機器に活用 |
ポリブチレンテレフタレート(PBT) | 1970年代 | 電気絶縁性に優れ、家電部品・自動車内装に最適 |
ポリフェニレンオキシド(PPO) | 1960年代 | 耐熱性・電気特性◎。OA機器や電子部品に使用 |
4. 高機能と環境対応:スーパーエンプラとバイオプラスチック
現在では、エンプラを超える耐熱性・耐薬品性を持つ「スーパーエンジニアリングプラスチック」や、再生可能資源から作られる「バイオプラスチック」の需要が急増しています。
スーパーエンプラ:先端分野で活躍する高機能樹脂
材料名(略号) | 誕生時期 | 特徴・用途 |
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PEEK | 1980年代 | 超耐熱・耐薬品性。医療機器、航空宇宙部品に活用 |
PPS | 1970年代 | 高寸法安定性・耐熱性◎。自動車部品や電子部品に |
LCP(液晶ポリマー) | 1980年代 | 高周波特性と超高流動性。5Gデバイスに最適 |
PI(ポリイミド) | 1960年代 | 耐熱性300℃超。電子絶縁・宇宙分野で活躍 |
PSU(ポリスルホン) | 1960年代 | 熱水対応。医療配管や精密フィルターに使用 |
環境配慮型:バイオプラスチックの種類と特徴
バイオプラスチックには、生分解性を持つタイプと、再生可能資源から製造されるタイプの2種類があります。特に注目されているのがPLA(ポリ乳酸)とPHA(ポリヒドロキシアルカノエート)です。
- PLA:トウモロコシ由来。食品容器や3Dプリンタ用に使用。安価で実用化が進む。
- PHA:微生物由来。海洋分解性があり、農業資材や水産業に期待。
EUではSUPD(使い捨てプラスチック指令)を背景に、企業がこぞってバイオ素材の導入を加速。日本国内でもコンビニや日用品メーカーがPLA製品を採用し始めています。
まとめ:プラスチックの種類は社会とともに進化する
プラスチックは「身近な日用品」から「金属代替」「環境対応素材」へと進化を続けています。用途や素材特性を正しく理解することで、製品開発や調達戦略にも差がつきます。
今後は脱炭素やサーキュラーエコノミー対応が求められる中で、「次世代プラスチック」の重要性はさらに高まっていくでしょう。
もし、貴社の製品開発や素材選定においてお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。